共同研究者インタビュー

大垣市民病院
森島逸郎 / 森田康弘

鉄道唱歌35番にうたわれる大垣は、湧水豊富で古くから「水都」と称される街で松尾芭蕉の「奥の細道」結びの地としても知られています。大垣市民病院は昭和34年10月1日に当時岐阜県厚生農業協同利用組合連合会立病院であった西濃病院が大垣市に譲渡され誕生しました。現在病床数903床(一般 857床・結核 40床・感染症 6床)まで規模を拡大し岐阜県西部の西濃圏域医療圏(人口400,000人)の中核的基幹病院として地域とともに歩んでいます。

その中で循環器内科は副院長1名、部長1名、医長5名、医員5名の12名で2016年に2371症例の入院、571症例のPCI、354例のablation、138例のデバイス治療(電池交換含む)、33例のTAVI、57例のEVAR、201例の末梢血管治療を行っています。

心房細動と虚血性心疾患の合併は数が多く、2016年のPCI施行例のうち53例は抗凝固薬を服用しており、新規心房細動アブレーション例173例のうち16例は抗血小板薬を併用しています。高齢化に伴いこれらの症例は増え続けることが予想され、欧米に比べて脳出血の多い本邦においては抗血小板薬と抗凝固薬の至適内服療法の確立は至上命題です。REWRAPSの結果は今後の本邦の医療に必要不可欠なものであると考えています。

 

中部ろうさい病院
酒井慎一 / 原田憲

中部ろうさい病院は名古屋市港区に位置する556床の総合病院です。港区、南区、熱田区を主な医療圏としており、名古屋市南部地域のセンター病院として、勤労者だけでなく地域住民の医療需要にも応じた高度な医療を提供できるよう日々努めています。その中で、我々循環器内科は、スタッフ7名,専攻医3名の10名体制で、2016年は179件のPCIと128件のアブレーションを施行しています。また下肢のEVTにも積極的に取り組んでいます。

最近の当院の傾向として、虚血性心疾患の患者さんが減少している一方、アブレーション治療の患者さんが増加しています。カテーテルアブレーション手術のうち8割以上が心房細動に対するものです。その中には冠動脈ステント留置後で抗血小板剤を内服中の方も少なからずおられます。

PCI/ステント留置後の心房細動患者の術後管理について、昨年ESCからガイドラインが示されました。抗血栓療法に関して12ヶ月以降については、抗凝固薬単剤が推奨されていますが(class I B)、当院ではSAPT+抗凝固薬の継続が多い傾向にあるようです。当院での心房細動を合併した冠動脈ステント留置後の患者さんの抗血栓療法は、主治医の判断にまかされています。我々が現在行っている治療が妥当であるかどうか、今後の研究結果が待たれるところです。このREWRAPS研究は、実際に診療にあたっている臨床医の治療にエビデンスを与えるといった点で、非常に有意義な臨床研究であると考えております。

登録症例を増やすために当院では、登録可能な患者さんをリストアップして頂き、外来受診の前に主治医に報告しています。また研究同意書を外来の分かりやすい場所に保管したり、診療助手の方に研究説明を手伝ってもらったりして、なるべく外来中の主治医の負担を少なくするように工夫しています。この地域から新たなエビデンスを世界に発信できるよう、微力ながら今後も貢献していきたいと思っています。

 

一宮市立市民病院
志水清和 / 杉浦剛志

一宮市は名古屋市の約3分の1の広さで37万人の人口を有する街で、当院はこの医療圏の公立基幹病院として584床の病院として対応しております。数年後には新棟ができ、ハイブリッド手術室も導入される予定です。

2015年のPCI件数は454件で、アブレーション件数は118件施行し、その他のインターベンションも積極的に取り組んでおります。

当院では抗凝固療法が必要な患者のPCI後のDAPT継続は、基本的には6カ月でSAPTに移行する方針ですが、最終的には主治医が出血リスクやステント留置の状況を総合的に評価して判断しています。結果的には、半年でのSAPTへの移行がほとんどです。

症例登録対象となる患者さまは1年後のrestudyが問題なければ、その後は近隣の医療施設にお願いすることになり、ステント血栓症などの狭心症の再発や心不全などでは我々のところへ戻ってくるのですが、一方で脳出血や消化管出血では我々の目に触れることはありません。こういった背景もあり、我々は総じて出血合併症より血栓性合併症に知らず知らずのうちに、重点を置いている傾向があるようです。実際、開業医の先生方にお願いした患者さまを本研究に登録するために、その後の経過を確認したところ、予想以上に出血性の合併症を起こしている現実に直面しました。冠危険因子を複数有する高齢者がPCIの対象となることが多いわけですが、一方で、これらの患者さんは出血の危険も当然高いことは再認識しなければなりません。従って、本研究は極めて重要なものです。DOACの開発で抗凝固療法が目覚ましい勢いで臨床現場に普及している状況を考えれば、さらに意義深いものと思われます。抗血栓療法の組み合わせや多剤併用期間など、本研究を通して示されることを期待していますし、その為に微力ながら寄与できればと考えております。

当院では、少しでも登録症例を増やすためにPCI症例から1年経過した患者さんのリストを作成し、登録可能な症例を外来主治医に報告したり、あるいは、外来担当医は外来ごとに事前に登録可能な症例を見落としていないかを確認しおります。今後も、スタッフ一同、世界にむけたテーマの研究に参加協力できることに感謝しつつ、本研究に少しでも貢献できるよう努力していきたいと考えております。

名古屋大学 循環器内科
石井秀樹 / 鈴木進

 AFを合併している患者さんにPCIを行った際の抗血栓薬使用は、この数年循環器分野では最も大きなトピックの一つとなっています。

 DESの進化に伴い、DAPT期間の短縮とともに、WOEST試験以降SAPT+抗凝固薬という投与方法も模索されています。2016年のAHAでは、PIONEER AF-PCI試験の結果が発表(同日NEJM誌にも掲載)され、AFを合併している冠動脈ステント術後、リバーロキサバン(15mg)+P2Y12阻害薬、又は低用量(2.5mg×2回/日)のリバーロキサバン+DAPTは、VKA+DAPTと比べて、有効性は変わらないものの、臨床的に有意な出血リスクを低下させるという結果が出ました。

 しかしながら、まだ本邦での知見は乏しく、各臨床医が患者さんごとに手探りで投与を決めているのが実情ではないかと考えられます。また、stent自体の添付文書ということに目を向けても、ほとんどのDESで半年以上DAPTを使用するようにとの記載があり、安易に中止することに対して安全管理上の懸念を感じられている先生も多いと思われます。名古屋大学では、こういったことからAFの併存する患者さんには未だにBMSを使用するケースも多いのが現状です(BMSを使用することへの懸念を感じられる先生も多いとは思いますが、現在のBMSは性能も良く、症例を選択すれば再狭窄率は10%以下となっています)。

 REWRAPS研究はPCIを施行して1年以上経過した患者さんを登録する検討ではありますが、欧米とは患者背景も異なる本邦のデータ構築を行うということはとても重要なことであると思います。またこれをきっかけとして東海地方の研究について、インフラ整備を行うという面もあるのではないかと思います。REWRAPS研究登録の際の工夫として、当院では循環器内科に通院中の患者さんを虚血メンバーで手分けし、2週間で全員を確認しました(ローラー作戦です)。最近は病診連携も進んでいるため、外来患者さんの数も減っているため、20名弱の患者さんしかエントリーできておりませんが、今後も「東海地方からのエビデンス作り」をモチベーションとし、頑張っていきたいと思いますので、ご指導・ご鞭撻のほどお願いいたします。

公立陶生病院 循環器内科
副院長 兼 臨床研究部副院長 味岡正純 / 循環器内科部長 神原貴博

今年で創立80周年を迎える公立陶生病院は、現在新病棟建設の真最中です。この建物が完成する2年後には、10年に及ぶ病院の整備がすべて終了し、災害拠点病院に相応しい、免震構造の病院に生まれ変わることになります。

陶生病院は、昭和11年に地域住民の強い要望から病床数35の医療組合病院としてスタートしたのですが、現在では瀬戸市、尾張旭市、長久手市の三市を基盤に、病床数701の総合病院に育ち、名古屋市の東部に広がる尾張東部医療圏で唯一の公立の基幹病院でもあります。その中で、我々循環器内科は、スタッフ6名,専攻医6名、研修医3名の合わせて15名体制で、年間約400件のPCIと約200件のアブレーションを施行しています。

陶生病院の診療圏は、かつて伝統的な陶磁器産業が栄えた地域です。それだからこそ、愛知県下でも際立って高齢化が進行した地域になっていて、日本が現在直面しつつある超高齢化を10年先取りしている『高齢化の先進地域』とも言えそうです。循環器内科の診療にもこの超高齢化の波は押し寄せており、2015年の心不全入院患者の65%が80歳以上であり、このグループの患者では、45%近い患者に心房細動の合併が見られました。カテーテルアブレーションにおいても心房細動が7割近くを占めるに至っています。超高齢化社会では心房細動は極めてポピュラーな疾患であり、循環器領域では、出血のハイリスクである80歳を超えた超高齢者に、抗血小板薬と抗凝固薬の2種類の抗血栓薬の併用を行わざるを得ない場面にもしばしば遭遇します。それだけに、REWRAPS研究のテーマである心房細動合併PCI施行患者に対する抗血栓療法のストラテジーは、我々の世代が答えを出さねばならない重要な課題だと考えて、参加させていただけることを誇りに思っています。

昨年度のPCI施行患者は、平均年齢が72歳と心不全患者に比べて低いので心房細動の合併は12.3%でした。これらの心房細動合併患者には、9割にDOACが抗血小板剤に併用投与されています。これらの患者群から、REWRAPS研究に組み入れ可能な患者を選別し、今後も参加施設としての責任を果たしてゆきたいと考えております。

安城更生病院 循環器センター
副院長 兼 循環器センター長 度会正人 / CCU医長 光田貴行  

高齢化社会を迎えたわが国では、高齢者人口の増加に伴って、心房細動患者数も増加しており、2030年には100万人を突破すると推定されています。また、冠動脈疾患と心房細動との合併例も増加しており、心房細動患者の15%に冠動脈疾患が合併していることが分かっています。そんな中、冠動脈疾患と心房細動を合併した患者さんにおける、ステント留置12か月後以降の慢性期抗血栓療法に関する多施設前向き研究であるREWRAPS研究に参加しエビデンスを作っていくことは非常に意義のあることと考えております。

安城更生病院は、人口18万人の安城市における市民病院的役割、ならびに人口108万人を擁する西三河南部圏域の地域中核病院としての使命を担う病院です。当院では年間550-600件のPCIを施行し、また200-250件のカテーテルアブレーション手術のうち心房細動に対するものが半数強を占めています。当院での心房細動を合併した冠動脈ステント留置後の患者さんの抗血栓療法は主治医の判断にまかされていますが、基本的にはステント留置直後はDAPT+抗凝固薬の3剤併用療法としています。各医師とも、早期にSAPT+抗凝固にしていますが、1剤中止までの期間は症例ごとに判断され1-6か月と幅があります。SAPTでは、最近はアスピリンを中止してチエノピリジン系薬剤を続行することが多くなってきています。また、抗凝固薬はワーファリンよりもNOACが使われる傾向にあります。12か月以降でも抗凝固薬単剤とするケースはいまのところほとんどないようです。

当院はREWRAPS研究への登録症例数が、藤田保健衛生大学病院に続いて2位となっています。以下に当院での患者の症例登録までの流れを示します。まずPCIを施行してから1年以上たった患者全員のリストを放射線技師が作成し、当院のCRCに提供します。CRCはリストの患者のカルテ全てをチェックし、対象症例をピックアップします。続いてCRCは対象患者のカルテにその旨を入力し、尚且つ外来に立ち会い試験の詳細についての説明も行います。ピックアップした患者のうち約9割が症例登録できています。このように医師、放射線技師、CRCとの連携がうまくいっている事で、比較的順調に症例登録できているのだと思います。これからもこのREWRAPS研究に数多くの症例を登録し、結果を世界に発信できるよう、共同研究者として貢献したいと考えております。

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